【風を読む】責任取らぬ「幸福の首相」 論説副委員長・五十嵐徹

2010.10.19 07:59
このニュースのトピックス菅首相
 菅直人首相は世界一幸せな総理大臣である。
国の命運がかかる場面で、幾度となく指導力の欠如を問われながら、その座に居座り続けていられるからだ。
 尖閣諸島をめぐる一連の対中外交姿勢はその典型例だが、これから本格化する補正予算案や来年度予算案の編成でも、最高責任者の自覚がどこまであるのか疑わしい。

 緊急経済対策を含む補正予算の策定には、政権としての基本的編成方針をまず示して議論を呼びかけるのが筋だが、野党の御用聞きに徹し、それを丸のみすることで乗り切ろうとする腹のようである。
 
予算編成でも、政権の主体性の乏しさは変わらない。「政治主導」を旗印に1兆円超の「元気な日本復活の特別枠」を打ち出しはしたものの、予算配分は各省が経済成長や雇用拡大策を競う「政策コンテスト」で決めるという。

 コンテストにはパブリックコメント(意見公募)方式が導入された。官僚のアイデアを募り、国民の判断も尊重するといえばまことに聞こえがいい。
だが、事実上の判断は、先ごろ発足した国会議員や有識者による「評価会議」が行い、首相が追認するということのようだ。
 
 こうなると、パブコメは体のいい話題作りにすぎず、国民の不満封じに使われているといえる。政治主導が聞いてあきれる。
 菅政権には「皆さんの声を聞いて」のせりふに象徴される、国民本位に名を借りた、決断回避の姿勢が目につく。
いかに
ねじれ国会とはいえ、日本経済の立て直しがかかる局面で自らの責任では何も決めようとしない菅政権の姿勢は問題だ。

 
オスカー・ワイルドの「幸福の王子」は民の窮状を救うため、わが身の金箔(きんぱく)や宝石を削ったが、世界一幸せな首相は何も決断せず、責任を取ろうとしない。
その間にも、この国は確実に下り坂を転げ落ちていく。
「最小不幸社会の実現」という就任以来の政権スローガンも泣いているのではないか。

転載元 転載元: 産経新聞

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